白糸刺しゅう

シュバルム刺しゅうとは

パントン久美子

白糸の女王と呼ばれる、ドイツの白糸刺繍のご紹介です。

シュバルム刺しゅうは、ドイツの刺しゅうです。白糸の女王とも呼ばれています。

白糸刺繍の中では新しく19世紀に、ドイツのシュバルムスタット(シュバルム村)で誕生しました。新しい白糸の技法なので、いろんな白糸刺繍の技法の良いとこ取りをしています。

シュバルム刺しゅうの歴史

ドイツのヘッセン州にあるシュバルム村で刺されていた刺しゅうです。19世紀初頭から刺され始めたと言われていますが、「初期のシュヴァルム・ホワイトワーク」というシュバルム刺しゅうの前身の技法は18世紀初頭から刺されていたそうです。

シュバルムは、布から織り糸を抜いてかがり模様を刺すステッチですが、初期のシュバルムはぬから糸を抜かず、その代わりにマス目になるように糸を渡して今と同じかがりのステッチを刺していました。

シュヴァルムは、他の白糸刺しゅうと同様、主にベッドカバーやクッション、装飾用のタオル、女性の胴衣や男性のシャツ、特別な祝祭の場に使われる装飾ハンカチ、洗礼衣などに刺されました。

モチーフ

モチーフはへデボのヴィズスムに使われるものとそっくりで、ハートやチューリップ、草木、円、カゴ、鳥などが多く見られます。

もっと昔は刺しゅうは王族や貴族の生活用品に刺されていましたが、19世紀に発展したシュバルムは、中流家庭でも刺されていたはずなので、モチーフは人々の生活の中でよく見る物、草木やカゴ、鳥などが多いのでしょう。

ハートはデンマークのへデボのヴィズスムでもよく使われます。デンマークでは今でもハートのモチーフはよく使われていて、お誕生日でも何か装飾するときや刺しゅうなどの図案にデンマーク国旗と同じくらいハートはよく見かけます。

デンマークではハートは友愛の印として、重宝されました。やはり戦争が多かったので、愛を示すハートのモチーフに戦地に行く家族や平和への願いを込めていたのだと思います。

シュバルムはエリアからしてデンマークの統治に入ったことはないですが、やはり戦争が多かった時代なので、ハートのモチーフが多く使われていたのだと推測します。

可愛らしいモチーフがギュッと詰まって刺されることが多いので、華やかで女性らしい刺繍です!

使われるステッチ(へデボとの比較)

コーラルステッチとチェーンステッチ、ボタンホールステッチをよく使います。

へデボのヴィズスムは、モチーフを二重のチェーンステッチで囲みますが、シュバルムはコーラルステッチとチェーンステッチで囲みます。これは刺してみるとわかるのですが、ヴィズスムよりシュバルムの方が工程が簡略化されていて、布から織り糸をカットするため、布をしっかり守る必要があります。チェーンステッチを二重に刺すより、コーラルステッチとチェーンステッチの2種類を使ったほうが布のほつれ止めの役目を果たせるので、コーラル&チェーンの組み合わせにしたのでしょうね。

ヴィスズムと同じく、図案には伸び伸びとした葉っぱや茎が用いられます。ヴィズスムの場合は、チェーンステッチで刺しますが、シュバルムはコーラルステッチを使います。

コーラルステッチの方が曲線が刺しやすく、きれいな曲線を出せるので、ヴィズスムを改良したのかななんて思ったり。

ドイツ人らしく色んなところが合理的になっていて、刺しやすい技法です。

おすすめの本

シュバルムの本のおすすめは、もう絶版になってしまった大塚あや子先生のこの本

たまにメルカリで安く出ていたりするようです。

カラーでステッチの刺し方がわかりやすく書かれています。

シュバルムを習うなら

大塚あや子先生のスタジオエクルで習うことができます。

私もちょっとだけ通ったことがあります。ただし何年もシュバルムしか刺せないので、シュバルムが大大大好きな方であれば良いですが、他の白糸刺しゅうを習いたかったり、自分の作りたいものを作りたい方には向いてないかも…。

NHKのカルチャーセンターでも大塚先生が監修されたお教室があったはず。

オンラインで習うなら私の講座がおすすめです。

ドイツ人の先生に直接ご指導いただいた本物のシュバルム刺しゅうを学べます!フォーサイドステッチも裏から刺したり、日本では習えない本場のステッチが習得できます。

この作品はシュバルム講座で作るクロスをクッションカバーに仕立てたもの。両サイドはドロンワークも入れてみました。シュバルムってダーニングステッチを入れたドロンワークと刺されることが多いので、ドロンワークを入れるとよりドイツ度が増してかわいいです!

ドロンワークの部分はDMCの25番糸の2本どりで刺しました。1番という色がすてきなグレーで気に入っています。

ほんとはアンカーの234番という色を使いたかったのですが、アンカーは色落ちが心配なので色糸はDMCの方が安心。薄い色だから大丈夫だと思うのですが、刺しゅうを入れた作品に万が一のことがあっては困るので、私はDMCを使うようにしています。

淡いグレーと白がシックでお気に入りです。ちょっと大人めなシュバルムになりました。

ドロンワークも無料の講座があるので、ご興味ある人はまずは無料講座からご受講くださいね。

ABOUT ME
パントン久美子
パントン久美子
デンマーク在住 白糸刺繍家
2009年スカルス手工芸学校に留学しヘデボを学ぶ。2012年〜2017年まではパリ在住。ルサージュやフランスの白糸刺繍教室で刺繍を学ぶ。現在はコペンハーゲン在住。
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